三原誠院長がお勧めの論文紹介(2024年版)

【リンパ浮腫治療の最前線から:患者さんとセラピストのための知識の架け橋】

皆さま、こんにちは。むくみクリニックの院長、三原です。

リンパ浮腫は、多くの方にとって日々の生活に大きな影響を与えるものです。しかし、適切な治療や日々のケアを通じて、症状を軽減し、生活の質を向上させることができます。私たちのクリニックでは、最新の治療法や保存療法を組み合わせたアプローチを用いて、患者さん一人ひとりに最適なケアを提供しています。

 

このページでは、リンパ浮腫に関連する最新の研究や、私たちがこれまで発表してきた論文の要約をわかりやすくお伝えします。世界中の優れた研究者たちが行った研究結果や、私たちの実績を基に、患者さんや治療に関わるセラピストの皆さまにとって有益な情報を厳選してお届けします。

 

リンパ浮腫の治療は、一人で向き合うものではありません。皆さんが安心して治療を受け、日々のケアを続けられるよう、私たちは常にサポートしてまいります。少しでもお役に立てる情報をお届けできれば幸いです。一緒に前向きな気持ちで、一歩ずつ前進していきましょう。


2024年10月20日(論文の原文は以下)

https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC8576825/pdf/nihms-1740971.pdf

キャンサーサバイバーのための運動ガイドライン:健康を取り戻すために

翻訳と解説

目的

世界中でがんを克服したサバイバーの数は増え続けており、アメリカだけでも1,550万人以上のサバイバーがいます。しかし、がんを経験すると、治療の影響で心身の健康に課題が残ることが多く、体力の低下や生活の質の低下、再発のリスクが高まることもあります。2010年にアメリカのスポーツ医学大学が主導して、がんサバイバーに向けた運動ガイドラインが初めて発表されました。このガイドラインでは、がんサバイバーが安全に運動でき、体力や生活の質の向上、がん治療による疲労感の軽減が期待できると結論づけました。

方法

2018年に再び専門家が集まり、運動の具体的な指導方法をがんの種類や治療のタイプ、患者さんの健康状態に合わせて提案するためのガイドラインを策定しました。このガイドラインでは、運動がどのような効果をもたらすかを詳しく調査し、より具体的なプログラムを提案しています。

運動の効果

研究の結果、運動ががんサバイバーに安全であるだけでなく、以下のようなさまざまな効果があることがわかりました。

  • 不安やストレスの軽減:中程度の強度での有酸素運動(ウォーキングなど)や、これを含むトレーニングは、週に2〜3回行うことで、不安感を減少させる効果があります。
  • うつ症状の改善:週に3回以上の中程度の有酸素運動や、週に2回以上の筋力トレーニングを組み合わせたプログラムで、うつ症状の改善が見られました。
  • 疲労の軽減:がん治療中や治療後においても、12週間以上続ける中程度の有酸素運動が、疲労感の軽減に役立つとされています。
  • 生活の質の向上:有酸素運動と筋力トレーニングを組み合わせることで、生活の質が向上することがわかっています。
  • リンパ浮腫に関する安全性:かつては運動がリンパ浮腫を悪化させると考えられていましたが、現在の研究では、適切に管理された運動は安全であり、むしろ症状の改善に役立つ可能性があることが示されています。

運動プログラムのポイント

  • 開始する際の注意点:治療の種類や健康状態に応じて、運動を始める前に医師の指導を受けることが重要です。特に、がん治療による心血管疾患のリスクがある場合は、運動プログラムを始める前に医療機関での確認が推奨されます。
  • 適切な運動の頻度と強度:週に2時間半以上の中程度の有酸素運動が推奨されています。運動の種類としては、ウォーキングや軽いジョギングなどが適しています。また、週に2回の筋力トレーニングを組み合わせると、さらに良い効果が期待できます。

結論

このガイドラインは、がんサバイバーの健康回復をサポートするための運動プログラムを提案しています。運動はがんの再発率を下げ、心の健康を支える大切な要素です。これからも新たな研究により、さらに効果的で安全な運動プログラムが開発されることを期待しています。